移ったあと、しんどくなるのは珍しいことではありません。
当サイトの100人調査でも、アパレルを離れてよかったと答えたのは65人でした。残りの35人のうち、25人は「どちらともいえない」、10人は「そう思わない」と答えています。移った人の全員が、晴れやかになったわけではありません。
この章では、しんどくなったときに、続けるか、辞めるかをどう考えるかを扱います。
先に、2つのことを書いておきます
ひとつめ。早く辞めすぎると、次の転職で不利になることがあります。
職務経歴書に、短い在籍がいくつも並ぶと、採用する側は「うちに来ても、また短く辞めるのではないか」と心配します。面接ガイドの第1章で書いたとおり、面接でいちばん確かめられていることのひとつが、「また辞めないか」です。1回の短い在籍は説明できても、それが続くと、説明が難しくなります。
ふたつめ。それでも、無理をして続けてはいけません。
心や体を壊してしまうと、回復に時間がかかります。そうなると、次の仕事を探す力そのものが失われます。職務経歴書の短い在籍は説明できますが、壊した体は、すぐには戻りません。
この2つは、矛盾しません。 大事なのは、しんどさの中身を分けて、それぞれに合った手を打つことです。
しんどさを、3つに分ける
| しんどさの中身 | どういう状態か | 取る手 |
|---|---|---|
| 心と体 | 眠れない、食べられない、朝起き上がれない、涙が出る | 続けるかどうかより先に、休む・相談する |
| 慣れ | 分からないことが多い、手応えがない、疲れる | 時間が解決する見込みがある。最初の3か月は続けて様子を見る |
| 合わない構造 | 仕事の中身や会社のやり方が、聞いていた話や自分の軸と根本から違う | 社内で変えられないか試す。それでも無理なら、次を考える |
心と体に出ているなら、それが最優先
上の表の1行目に当てはまるなら、ほかの2つを考えるより先に、体を守ってください。
- 休む。 有給休暇を使う。体調が悪いことを、上司に伝える
- 医療機関にかかる。 眠れない、食べられないが続くなら、早めに
- 相談する。 社内に相談窓口があれば使ってください。社外では、厚生労働省の「こころの耳」が、働く人の心の悩みについて電話・メール・SNSで相談を受けています(相談窓口の案内)
ここで「職務経歴書に傷がつくから」と我慢する必要はありません。体を守ることのほうが先です。
慣れの問題なら、時間を味方にする
分からないことが多い、手応えがない、毎日がとても疲れる。移ったばかりなら、それは慣れていないだけかもしれません。
第4章で書いたとおり、最初の数か月は、できない側にいるのが普通です。慣れの問題で辞めてしまうと、次の職場でも、同じ時期がまた来ます。
だから、慣れの問題だと思えるなら、最初の3か月は続けて様子を見ることをおすすめします。そのうえで、第4章の方法(用語のメモ、聞き方の型、週ごとの手応え)を試してください。
合わない構造なら、辞める前に試す
慣れではなく、仕事の中身や会社のやり方が、根本から合わないこともあります。聞いていた仕事と違う。どう頑張っても、自分が取り戻したかったものが手に入らない。
その場合も、辞める前に、社内で変えられないかを試してください。
- 上司に、具体的に相談する。 何がしんどいのか。どうなれば続けられそうか
- 担当や配置を変えられないか聞く。 同じ会社でも、部署や担当が変われば、仕事の中身が変わることがあります
- 業務量を調整できないか聞く
- 給与や休みなど、条件が聞いていた話と違うなら、内定のときの書面を見直して、事実で話し合う(転職活動の進め方 第6章)。労働条件のことは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーにも相談できます
試したうえで変わらなかった、という事実は、次の面接で説明の材料になります。 何も試さずに辞めた場合とは、受け取られ方がまったく違います。
それでも辞めると決めたら
試したうえで、それでも辞めると決めたなら、それはあなたの判断です。そのうえで、次で同じことを繰り返さないために、いくつか押さえておきます。
何がずれていたのかを、言葉にする
転職活動の進め方 第1章で、最初に「何を取り戻したいか」を決めることをお伝えしました。
今回、どこがずれていたのかを書き出してください。取り戻したかったものが手に入らなかったのか。それとも、取り戻したかったもの自体が、実際に働いてみたら違ったのか。
ここを言葉にしないまま次を探すと、同じ理由で、また辞めることになりがちです。
次は、在職中に探す
体調に問題がなければ、次が決まるまでは在職中に探すほうが安全です。収入が途切れず、焦らずに選べます。短い在籍のあとに空白の期間が続くと、面接での説明がさらに難しくなります。
短い在籍は、隠さずに説明する
在籍が短くても、職務経歴書から省かないでください(職務経歴書ガイド 第3章)。在籍期間は、雇用保険などの記録と照合されることがあります。
面接では、事実 → 判断 → これからの順で話します(面接ガイド 第2章)。
当サイトで取材した方のひとりは、新卒1年でアパレルを辞めています。その方が説明できたのは、辞める前に、大型店への異動を願い出て、断られていたからでした。何を考え、何を試して、何が起きたのか。それが説明できれば、短さそのものは決定的な問題になりません。
辞める前に試したことがある人は、短い在籍を説明できます。 だからこそ、上の「辞める前に試す」が効いてきます。
この章のまとめ
- 移った人の全員が晴れやかになるわけではない。100人のうち35人は、よかったとは言い切っていない
- 早く辞めすぎると、次の転職で不利になることがある。短い在籍が続くと「また辞めるのでは」と見られる
- それでも、無理をして続けてはいけない。体を壊すと、次を探す力そのものが失われる
- しんどさを心と体・慣れ・合わない構造の3つに分ける
- 心と体に出ているなら、それが最優先。休む、医療機関、相談窓口
- 慣れの問題なら、最初の3か月は様子を見る
- 合わない構造なら、辞める前に社内で試す。試した事実は、次の面接の材料になる
- 辞めるなら、何がずれていたのかを言葉にして、在職中に次を探す
このガイドのまとめ
- 不安は5つに分けて、移る前に減らせるものから手をつける(第1章)
- 売場からオフィスへ移ると、時間・評価・相手・道具・言葉が変わる。人の困りごとを聞く力は変わらない(第2章)
- 入社前は、1冊・マナー・道具・リズム・聞いておくことから、できるものだけ。休むことも準備(第3章)
- 最初の3か月は、覚える → 任されたことを確実に → 売場の工夫を出す。先輩の真似から始め、人間関係は自分から作る。比べる相手は先月の自分(第4章)
- しんどくなったら、中身を分ける。体が最優先、慣れなら時間を味方に、構造なら辞める前に試す(第5章)
不安だったことと、うまくいくことは、両立します。移った先で、売場で身につけたものは、形を変えて残ります。