ガイド / 転職活動の進め方

VOL.1 第6章 / 全6章

求人を見極める

前の章では、求人票の読み方を扱いました。この章では一歩進んで、見極め方を扱います。

先にお断りしておきます。当サイトは、「入ってから求人票と違った」という経験を集めた一次情報を持っていません。だからこの章は、公的なルールと、確かめる手順を中心に書いています。

そしてもうひとつ。この章に出てくるサインは、どれも「それだけで悪い求人」という意味ではありません。 確かめる理由になる、という意味です。決めつけて応募をやめるより、確かめてから決めるほうが、良い求人を逃しません。

求人には、書かなければいけないことが決まっている

求人を出す会社は、少なくとも次のような条件を示すことが、職業安定法で決まっています。

これを知っているだけで、見るべき場所が分かります。 書かれていない項目があれば、それは確かめる項目です。

2024年4月から、「変更の範囲」も示されるようになった

2024年4月から、示す条件が追加されました。

「変更の範囲」とは、入社直後だけでなく、将来の配置転換の見込みも含めた範囲のことです。たとえば厚生労働省の記載例では、仕事の内容が、入社直後は「法人営業」、変更の範囲は「製造業務を除く当社業務全般」となっています。いずれ別の仕事に移る可能性がある、ということです。

2024年4月から、仕事の内容と就業場所について、入社直後のものに加えて、将来の配置転換の見込みを含めた変更の範囲が示されるようになった。厚生労働省の記載例では、仕事の内容が入社直後は法人営業、変更の範囲は製造業務を除く当社業務全般。就業場所が入社直後は渋谷営業所、変更の範囲は都内23区内の営業所。本社の仕事に応募するなら、就業場所の変更の範囲に店舗が含まれていないかを見る。

アパレルから移る人にとって、ここはとくに大事です。当サイトの取材でも、本社勤務は土日休みに見えて、土日の店舗応援が伴うことがあるという話が出ていました。本社の仕事に応募するなら、就業場所の変更の範囲に店舗が含まれているかを見てください。

「詳細は面接で」と書かれていたら

求人広告の場所が足りない場合などは、「詳細は面接時にお伝えします」として、一部の条件をあとで示すこともできます。

ただし、その場合でも原則として、面接など最初に会う時点までに、すべての条件が示されることになっています。示されていない条件があれば、面接で聞いて構いません。 聞くのは失礼なことではありません。

そして、面接の途中で条件が変わる場合、会社はその変更の内容を示す必要があります。 最初に見た求人と話が違ってきたら、何が変わったのかを確かめてください。

(出典:厚生労働省「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」求職者の皆さま向けの資料)

確かめるきっかけになるサイン

ここに並べるのは、見かけたら確かめるものです。どれも、それだけで悪い求人とは限りません。

サイン 考えられること 確かめ方
いつ見ても、同じ求人が出ている 人が定着していない。あるいは、事業が広がって人を増やしている 面接で、募集の背景と、前任の方がいまどうしているかを聞く
給与の上限ばかりが目立つ(「月収◯万円も可能」など) 一部の人の例であることがある 下限と、入社したときに想定している額を聞く
固定残業代の時間や金額が書かれていない 決まった書き方になっていない 内訳を聞き、書面で確かめる(後述)
仕事の中身が「全般」「幹部候補」だけ 中身が決まっていない。何でも任される 入社直後の仕事と、変更の範囲を聞く
年間休日が書かれていない 日数が少ないことがある 日数を聞く。120日前後かどうかが目安
面接が1回で、その場で内定が出て、返事を急かされる 急ぐ事情があることがある 返事の期限を延ばせるか頼む。条件の書面を先にもらう
条件を口頭でしか言わない ― 書面を求める(後述)

サインがひとつあったら、確かめる。いくつも重なっていたら、慎重になる。 その程度の使い方で十分です。

口コミの読み方

会社の口コミサイトや、SNSに書かれた声は、参考になります。ただし、100%は信用しないでください。 読み方があります。

評判が良すぎるときも、立ち止まる

口コミは、悪い方向にだけ偏るわけではありません。

会社が社員に口コミの投稿を呼びかけて、評価が高く見えるようにしている、という話を、転職エージェントから聞くことがあります。当サイトの運営者も、転職エージェントから直接そう聞いたことがあります。

これは確かめられた話ではなく、どの会社がそうしているのかも分かりません。ただ、そういうことが起こりうるとは知っておいてください。悪い評判に気をつけるのと同じように、あまりにも評判が良いところにも、少し注意が要ります。

次のようなときは、点数をそのまま受け取らずに、立ち止まってください。

どれも、それだけで疑う理由にはなりません。ただ、いくつも重なっていたら、点数ではなく、具体的に何が書かれているかを読んでください。良い口コミにも、悪い口コミと同じように「誰が・いつ・どこの話か」を当てはめます。

もちろん、評判の良い会社に、本当に良いところがあることも多いはずです。疑ってかかる必要はありません。

気をつけたいのは、口コミで期待を上げすぎることです。期待が高いほど、入ってからの小さな違いが、大きな失望に変わります。期待は、口コミの点数ではなく、面接と書面で確かめた事実に合わせておく。 そのほうが、入ってからの「こんなはずでは」が小さくなります。

そして、口コミで気になった点は、良いことも悪いことも、最後は面接で確かめます。 「口コミで見たのですが」と言う必要はありません。「繁忙期の働き方を教えてください」のように、働き方の質問として聞けば角が立ちません(面接ガイド 第4章)。

エージェントが紹介してくる求人の背景

紹介される求人が、どういう経緯で届いているのかを知っておくと、見え方が変わります。

そのうえで、使える方法があります。

内定が出たら、条件を書面で確かめる

ここがいちばん大事なところです。承諾の返事をする前に、条件を書面で確かめます。

会社は、労働契約を結ぶときに、労働条件通知書などの書面で条件を示すことが、労働基準法で決まっています。承諾の前に受け取れるよう、頼んでください。

確かめる手順

1、内定の連絡を受け、電話で聞いた条件はメモする。2、労働条件通知書や雇用契約書で、条件を書面でもらう。3、求人票と、面接で聞いた話と突き合わせる。4、違いがあれば承諾の前に確かめる。エージェントを使っていれば担当者に頼める。5、納得したら承諾する。退職を伝えるのはそのあと。

突き合わせる項目

項目 見るところ
仕事の内容 入社直後の仕事と、変更の範囲
就業場所 入社直後の場所と、変更の範囲。店舗が含まれていないか
賃金 基本給、手当、固定残業代の時間と金額、賞与
就業時間・休日 始業と終業、年間休日、休みの曜日
試用期間 期間の長さと、その間の条件(給与が違うことがある)
契約期間 期間の定めがあるか。あれば更新の基準
保険 雇用保険、健康保険、厚生年金に加入するか
入社日 いまの職場の退職日と、無理なく合わせられるか

固定残業代の読み方

月給に、一定時間分の残業代があらかじめ含まれている求人があります。いわゆる固定残業代です。

厚生労働省は、固定残業代がある場合、次の3つを書くよう示しています。

固定残業代がある場合、厚生労働省は、固定残業代を除いた基本給、何時間分の時間外手当としていくらかという固定残業代、その時間を超えた分は追加で支払うこと、の3つを書くよう示している。見るのは、基本給がいくらかと、何時間分か。月給が同じでも、固定残業代の割合が大きければ基本給は低くなる。

見るべきは、基本給がいくらかと、何時間分かです。月給の額が同じでも、固定残業代の割合が大きければ、基本給は低くなります。賞与が基本給をもとに計算される会社では、そこにも響きます。

3つのうちどれかが書かれていなければ、確かめてから承諾してください。

この章のまとめ

このガイドのまとめ

活動の全体が見えたら、次は書類です。職務経歴書ガイドに進んでください。その先に面接ガイドがあります。

どの方向に向かうかがまだ決まっていない方は、適職診断から始めると、軸が決まりやすくなります。