ガイド / 異職種・異業界に移るとき

VOL.4 第4章 / 全5章

最初の3か月の過ごし方

新しい職場の最初の数か月は、分からないことが多くて当然の時期です。

ただ、中途で入った人には、少しやっかいな事情があります。「できる前提」で見られやすいことです。新卒なら「知らなくて当然」の期間がありますが、中途にはそれが短く、周りの同年代はすでに何年かの経験を持っています。

その結果、分からないことそのものより、「こんなことも知らないのか」と思われそうで聞けないことのほうが、つらくなります。

この章では、その状態を抜けるまでの過ごし方を扱います。

3か月の考え方

ここで書く「1か月目・2か月目・3か月目」は、決まった日程ではなく、順番の目安です。会社や仕事によって、早くも遅くもなります。

1か月目は覚えて、真似る。人の名前と役割、社内の流れ、言葉を覚え、優秀な先輩のやり方を真似る。2か月目は、任されたことを確実にする。ひとつを説明できるようにする。3か月目は、売場でやっていた工夫を出す。相手が使いやすいように整える。日程ではなく順番の目安。

1か月目:覚える。聞ける期間だと割り切る

最初の1か月は、知らないことを聞ける期間だと割り切ってください。3か月経ってから同じことを聞くほうが、ずっと気まずくなります。

覚えるのは、仕事そのものより先に、次の3つです。

2か月目:任されたことを、確実にする

少しずつ、ひとりで担当する仕事が出てきます。

ここでは、範囲を広げるより、任されたひとつを確実にこなすほうが先です。全部を浅く分かっているより、ひとつを説明できるほうが、自信になり、信頼にもなります。

3か月目:売場でやっていた工夫を出す

仕事の形が見えてきたら、自分から動く場面を作ります。ここで、売場の経験が効いてきます。

当サイトで取材した、販売員から本社のマーケティング部門に移った方は、雑誌に掲載された情報を店舗に渡すとき、店舗の人が忙しいなかで、手元のスマートフォンからまっすぐ辿り着けるように、ファイルの名前の付け方まで決めたそうです。オフィスしか知らないと「流せば終わり」になりがちなところに、使ってもらって初めて意味があるという、売場にいた人の発想が出ています。

売場で、相手が使いやすいように何かを整えた経験。それは、どの職場でも出せる工夫です。

優秀な先輩の仕事を、真似ることから始める

仕事の覚え方で、いちばん早いのはこれです。

売場に入ったばかりのころを、思い出してください。売れている先輩の声のかけ方、商品の勧め方、たたみ方や並べ方。まず真似をして、それから自分のやり方を作っていったはずです。新しい職場でも、同じやり方が使えます。

最初から自分なりの工夫を出そうとしなくて大丈夫です。真似ができるようになってから、工夫を足せば十分です。 上で書いた「3か月目に売場の工夫を出す」は、その順番のことです。

人間関係は、自分から作りにいく

仕事を覚えることと同じくらい大事なのが、人間関係を作ることです。

聞きたいことを聞けるか。困ったときに助けてもらえるか。任せてもらえるか。最初の数か月の進み方は、仕事の力よりも、周りとの関係で決まる部分が大きいと思います。

ただ、ここには正直に書いておきたい難しさがあります。中途で入ると、職場の人間関係はもう出来上がっています。 いつものランチの顔ぶれ、雑談の輪、仕事の頼み方。その輪に、あとから一人で入っていくことになります。

勇気がいることです。 はじめての転職なら、なおさらです。それでも、ここは踏ん張りどころです。最初の数か月で関係を作れるかどうかで、その後の働きやすさが大きく変わります。

大きなことをする必要はありません。売場で、新しいスタッフやお客様との距離を縮めてきたのと同じことを、小さく重ねます。

人と向き合うことは、売場で毎日やってきたことです。初対面の相手との距離の縮め方を、あなたはもう知っています。

分からない言葉は、その日にメモする

覚えることのなかで、いちばん量が多いのが言葉です。

1か月続けると、自分専用の用語集ができます。聞く回数が減るので、聞くこと自体も気楽になります。

社内に残っている資料や議事録を読むのも効きます。先輩がどんな言葉で何を説明しているかが分かり、質問がまとまりやすくなります。

聞き方の型

「聞けない」の多くは、どう聞けばいいか分からないことから来ています。型を持っておくと、聞きやすくなります。

1、自分で調べた範囲を先に言う。2、分からないことをひとつに絞る。3、いつまでに必要かを添える。忙しそうな人には、まとめて聞く時間を先にもらう。

忙しそうな人には、まとめて聞く時間をもらうのも手です。「15分ほどお時間をいただけますか」と先に頼み、その時間にまとめて聞きます。売場で、忙しい時間帯を避けて先輩に声をかけていたのと同じです。

手応えを、自分で作る

第2章で書いたとおり、オフィスの仕事は手応えが遅く届きます。頑張っているのに何も進んでいない気がする時期が、多くの方に来ます。

だから、手応えを自分で作ります。

成果がすぐに出ない期間は、あらかじめ想定しておきます。法人営業なら、最初の数か月は種まきの時期です(法人営業への転職で最初に困ること)。

比べない

移ったばかりのころは、つい比べてしまいます。

副店長から人材業界に移った方は、移ったあとの壁について、アパレル時代との違いをこう話していました。アパレルでは、外の事情で売れないことが多く、自分ではどうにもならなかった。いまの壁は、

自分で頑張ればいけそう

だと。壁があることは同じでも、その種類が変わったということです。

聞いていた話と違ったら

入ってみて、聞いていた話と違うことはあります。

同じ方は、移ったあと業務量について、こう話していました。

だいぶ想定よりも業務量多かったな

小さな違いは、どの職場でも起きます。大事なのは、小さいうちに相談することです。

それでもしんどさが続くときの考え方は、次の第5章で扱います。

この章のまとめ

次の章では、しんどくなったときの考え方を扱います。